仕事をしていると、ときどき感じることがあります。
「お金を払っている方が偉い」と考えている人とは、できれば仕事をしない方がいい。
特にWEB制作やデザイン、コンサルティングなどの受託仕事では、この感覚はかなり重要だと思っています。
もちろん、お金をいただいて仕事をする以上、依頼された仕事に責任を持つのは当然です。
納期を守る。
約束した品質を提供する。
問題があれば対応する。
これはプロとして当たり前です。
しかし、
金を払っているんだから言うことを聞け。
という話とはまったく違います。
発注者と受注者の関係は、本来「上と下」ではなく、お互いが必要なものを交換している取引関係です。
今回は「お客様は神様」「お金を払う側が偉い」という考え方について、受託仕事をする側から考えてみます。
- 「お客様は神様です」は、客が偉いという意味ではない
- 発注者はお金を提供し、受注者は価値を提供している
- スーパーで買い物をしても客の方が偉くなるわけではない
- WEB制作では、この勘違いが特に起こりやすい
- 「客だから何を言ってもいい」は成立しない
- 「お客様第一」と「お客様絶対」は全然違う
- プロへ依頼するなら、プロの意見を聞いた方がいい
- 良い仕事は「上下関係」より「チーム」に近い
- 受注側も「仕事をいただいている」と思いすぎない方がいい
- 無理な要求を一度受けると、それが「普通」になる
- 理不尽な顧客を抱えることにもコストがある
- 一人で仕事をしているなら、なおさら顧客を選んだ方がいい
- 値段を叩く人より「価値を理解してくれる人」と仕事をする
- 「客を選ぶ」は偉そうな話ではない
- こんな兆候があれば少し注意した方がいい
- 逆に、長く付き合いたい顧客とは
- お金は「上下関係」を作るものではない
- まとめ|「お金を払う方が偉い」という人とは距離を置いていい
「お客様は神様です」は、客が偉いという意味ではない
日本では昔から、
「お客様は神様です」
という言葉があります。
その影響なのか、
- 客の言うことは絶対
- お金を払う人の方が立場が上
- 店や業者は客の要求を聞くべき
- 客に反論するのは失礼
という感覚を持っている人もいます。
でも、少なくともビジネスの取引をこの考え方で捉えるのは違うと思います。
お金を払っていることは、「相手より偉い」という権利を購入しているわけではありません。
購入しているのは、契約した商品やサービスです。
そこを混同すると、取引関係がおかしくなります。
発注者はお金を提供し、受注者は価値を提供している
そもそも仕事とは、基本的に価値の交換です。
例えばホームページ制作なら、発注者は制作会社へ50万円を支払ったとします。
では制作会社は50万円をもらっただけなのでしょうか。
当然違います。
制作会社側は、
- 知識
- 技術
- 経験
- デザイン
- 企画
- 制作時間
- 設備
- 人材
などを使ってホームページを提供します。
つまり、
発注者:お金を提供する
受注者:技術・時間・成果物を提供する
という交換です。
50万円を払った側だけが一方的に何かを与えているわけではありません。
スーパーで買い物をしても客の方が偉くなるわけではない
もっと単純に考えてみます。
スーパーで300円の商品を買ったとします。
客は300円を支払います。
スーパーは商品を渡します。
これで取引成立です。
だからといって、300円を払った瞬間に客が店員より偉くなるわけではありません。
飲食店でも同じです。
1万円払って料理を食べる。
客は1万円を失い、料理やサービスを得る。
店は料理やサービスを提供し、1万円を得る。
単純な交換です。
「お金を払う」という行為だけを切り取るから、払う側が一方的に相手へ利益を与えているように見えてしまうのだと思います。
WEB制作では、この勘違いが特に起こりやすい
WEB制作やデザインのような仕事では、この問題が起きやすいと感じます。
理由の一つは、完成するまで商品が見えにくいことです。
例えばパソコンを30万円で購入する場合、30万円と完成したパソコンを交換します。
ところがWEB制作では、契約した段階ではホームページがまだ存在しません。
そのため、
こちらがお金を払って作らせている。
という感覚になりやすいのかもしれません。
でも実際には、制作会社は契約後に時間と技術を投入して成果物を作っています。
完成品をその場で渡していないだけで、価値の交換という構造は同じです。
「客だから何を言ってもいい」は成立しない
顧客には当然、契約したサービスを受ける権利があります。
例えば、
- 見積もり通りの仕事をしてほしい
- 契約した機能を実装してほしい
- 不具合を直してほしい
- 納期について説明してほしい
- 進捗を報告してほしい
こうした要求は普通です。
むしろ受注側がきちんと対応するべきでしょう。
しかし、
- 契約外の作業を無料で要求する
- 無理な納期を一方的に要求する
- 営業時間外でも即対応を求める
- 高圧的な言葉を使う
- 専門家の説明を聞かない
- 「金を払っているんだから」と要求を正当化する
となれば話は別です。
料金はサービスへの対価であって、相手を自由に扱うための料金ではありません。
「お客様第一」と「お客様絶対」は全然違う
これは区別した方がいいと思います。
顧客を大切にすることは当然です。
どうすれば良い結果になるのか考える。
困っていればできる範囲で対応する。
専門家としてより良い方法を提案する。
長く付き合える関係を作る。
こうした「お客様第一」の姿勢は、商売をするうえで大切です。
しかし、
「お客様絶対」
になってしまうと話が変わります。
顧客を大切にすることと、顧客の要求をすべて受け入れることは同じではありません。
プロへ依頼するなら、プロの意見を聞いた方がいい
WEB制作でよくあるのが、専門家へ依頼しているのに、すべて自分の指示通りに作らせようとするケースです。
もちろん最終的な判断をするのは依頼者です。
しかし制作会社が、
この方法だとユーザーが使いにくくなります。
あるいは、
SEOを考えるなら、この構成の方がいいと思います。
と提案しても、
金を払っているのはこちらなんだから言った通りにしてください。
となってしまう。
これでは専門家へ依頼している意味がかなり薄くなります。
最終的に依頼者の希望通りに作ることはあります。ただしプロとして問題があると思えば、理由は説明するべきだと考えています。
良い仕事は「上下関係」より「チーム」に近い
個人的に、うまくいく仕事は発注者と受注者がチームに近い関係になっています。
発注者は、
- 会社のこと
- 商品
- 顧客
- 業界
- 現場
を知っています。
制作会社は、
- WEB
- デザイン
- システム
- SEO
- 広告
- ユーザー体験
などを知っています。
それぞれ持っている知識が違います。
だから、
「こちらが金を払っているから言うことを聞け」ではなく、「お互いの知識を持ち寄って良いものを作ろう」の方が、結果的に良い仕事になりやすい。
受注側も「仕事をいただいている」と思いすぎない方がいい
一方で、この問題は顧客側だけの話ではありません。
受注側自身が、
仕事をいただいている。
という感覚を強く持ちすぎていることもあります。
もちろん仕事を依頼してもらえることへの感謝は必要です。
ただ、過剰にへりくだる必要はありません。
仕事を依頼してもらった。
そしてこちらも、その料金に見合う仕事をする。
それで成立しています。
「仕事をもらっている」という意識が強すぎると、契約外の要求まで断れなくなります。
無理な要求を一度受けると、それが「普通」になる
受託仕事で特に注意したいのがこれです。
例えば、本来有料の修正を、
今回だけなので。
と無料対応したとします。
こちらとしてはサービスのつもりです。
ところが相手によっては、次回からそれが標準サービスになります。
さらに次の要求が来ます。
そして断ると、
前はやってくれましたよね?
となる。
善意で境界線をなくし続けると、結果的に自分で「何でも無料でやってくれる業者」という関係を作ってしまうことがあります。
理不尽な顧客を抱えることにもコストがある
売上だけを見ると、顧客を断ることは損に見えます。
例えば年間50万円の仕事を断れば、売上は50万円減ります。
しかし、本当に50万円の損なのでしょうか。
その顧客への対応に、
- 大量のメール
- 長時間の電話
- 何度もの打ち合わせ
- 契約外の修正
- 急な対応
- 精神的な消耗
が発生しているかもしれません。
その時間を別の顧客や新しい仕事に使えば、もっと利益を生み出せる可能性があります。
売上がある顧客=利益を生む良い顧客、とは限りません。
一人で仕事をしているなら、なおさら顧客を選んだ方がいい
フリーランスや一人会社の場合、使える時間には限界があります。
一日は24時間しかありません。
だから、
誰と仕事をするか
は売上以上に重要になることがあります。
一人の理不尽な顧客へ大量の時間を使えば、その時間は他の仕事に使えません。
逆に、お互いを尊重できる顧客との仕事なら、余計なやり取りが減り、本来の仕事へ時間を使えます。
値段を叩く人より「価値を理解してくれる人」と仕事をする
仕事をしていると、値段だけで判断する人もいます。
もっと安いところがあります。
もちろん、それなら安いところへ依頼すればいいと思います。
価格は会社を選ぶ重要な判断材料です。
しかし、こちらにも仕事を受けるかどうかを決める権利があります。
顧客には業者を選ぶ自由があり、業者にも顧客を選ぶ自由があります。
この関係が一番健全だと思います。
「客を選ぶ」は偉そうな話ではない
「客を選ぶ」と言うと、
そんな偉そうな商売でいいの?
と思う人もいるかもしれません。
でも、これは偉い・偉くないの話ではありません。
お互いに相手を選んでいるだけです。
発注者は複数の制作会社から依頼先を選びます。
制作会社も、依頼内容や条件を見て仕事を受けるか判断します。
普通の商取引です。
こんな兆候があれば少し注意した方がいい
契約前の段階でも、ある程度分かることがあります。
- 最初から高圧的
- 値引きの話ばかりする
- 他社や以前の業者の悪口が多い
- 営業時間を気にしない
- 専門家の説明をまったく聞かない
- 契約範囲を曖昧にしたがる
- 「これくらいサービスで」と頻繁に言う
- 自分の都合だけで納期を決める
一つ当てはまったから悪い顧客という話ではありません。
ただ、いくつも重なるなら慎重になった方がいいと思います。
契約前に感じた小さな違和感は、契約後になくなるより大きくなることの方が多いです。
逆に、長く付き合いたい顧客とは
個人的には、金額の大きさだけで良い顧客を判断する必要はないと思っています。
例えば、
- お互いの立場を尊重できる
- 分からないことは聞いてくれる
- 専門家の意見を聞いてくれる
- 約束を守る
- 必要な費用を理解してくれる
- 問題があれば話し合える
こうした相手とは仕事がしやすいです。
そして不思議なことに、こういう関係の方が結果的にこちらも、
ここまでやってあげよう。
と思えたりします。
良い取引関係は、契約書だけではなく「お互いに相手を尊重すること」でできている部分も大きいと思います。
お金は「上下関係」を作るものではない
仕事を依頼すると、お金が動きます。
だから分かりにくくなるのかもしれません。
でも、本質的には交換です。
発注者がお金を提供する。
受注者が技術や商品や時間を提供する。
お互いに条件が合ったから取引する。
それだけです。
お金を払う側が上でも、お金を受け取る側が下でもありません。
まとめ|「お金を払う方が偉い」という人とは距離を置いていい
「お客様は神様」という言葉を、客なら何を要求してもいいという意味で使うのは違うと思います。
顧客を大切にする。
料金をいただいた以上、責任を持って仕事をする。
これは当然です。
でも、それと上下関係は別です。
発注者と受注者は、それぞれ違う価値を提供して取引しています。
良い仕事をするために必要なのは「どちらが偉いか」ではなく、お互いの役割と専門性を尊重できる関係だと思います。
そして「金を払っているんだから」という考え方が根本にある人とは、無理に仕事を続けなくてもいい。
短期的には売上を失うかもしれません。
しかし、その時間を価値を理解してくれる顧客へ使った方が、長い目で見れば仕事もうまくいきやすいと思います。
顧客が仕事相手を選ぶように、こちらにも仕事相手を選ぶ権利があります。
独立して仕事をするなら、仕事の量だけではなく、「誰と仕事をするか」を選ぶことも経営の一つではないでしょうか。


