インボイス制度が始まったとき、免税事業者からインボイス発行事業者になった小規模事業者の負担を軽くするために導入されたのが、いわゆる「2割特例」です。
ところが、この2割特例はずっと続く制度ではありません。
2026年で終了します。
そこで気になるのが、
- 2割特例は具体的にいつまで使えるのか
- 2027年から消費税が一気に増えるのか
- 新しくできた「3割特例」とは何なのか
- 「8割控除が7割になる」という話とは何なのか
というところではないでしょうか。
さらにややこしいのが、2026年度税制改正によってインボイス制度の経過措置が変更されたことです。
先に結論
個人事業者については、一定の要件を満たせば2026年分まで2割特例を利用でき、その後の2027年分・2028年分には新しい「3割特例」を利用できる可能性があります。
また、免税事業者等から仕入れた側の仕入税額控除についても、従来予定されていた「80%→50%」ではなく、2026年10月から70%控除へ変更されています。
- そもそも「2割特例」とは?
- 2割特例はいつまで?
- 2027年から「3割特例」が始まる
- 3割特例を使えるのは2027年と2028年
- 3割特例は誰でも使えるわけではない
- 法人は3割特例を使えない
- 簡易課税とは?
- 3割特例と簡易課税、どちらが得?
- もう一つの変更「8割控除→7割控除」とは?
- 昔の記事にある「2026年10月から50%」は変更された
- 2割特例と7割控除はまったく別の話
- 免税事業者は2026年10月から仕事がなくなる?
- インボイス登録するかどうかは「税金だけ」で考えない
- 2026年中に確認しておきたいこと
- 売上が同じでも手取りは変わる
- 「売上=自分のお金」と考えない
- 消費税のために価格を見直すのもおかしくない
- まとめ|2026年はインボイス制度の大きな切り替え年
そもそも「2割特例」とは?
2割特例とは、インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者になった小規模事業者向けの負担軽減措置です。
通常、消費税の納付額を計算するときは、
売上でもらった消費税 - 仕入れや経費で支払った消費税
という計算をします。
しかし2割特例を利用すると、細かな仕入税額を計算しなくても、簡単にいうと、
売上にかかる消費税額の20%を納付する
という方法で計算できます。
例えば、売上に含まれる消費税額が100万円なら、納付税額は単純化すると20万円というイメージです。
小規模なフリーランスや個人事業主にとっては、税負担だけでなく計算の手間もかなり軽くなる制度でした。
2割特例はいつまで?
国税庁によると、2割特例は、
2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する課税期間
が対象です。
この表現は少しわかりにくいのですが、個人事業者について国税庁は、
2026年分の確定申告まで2割特例を利用可能
と案内しています。
つまり個人事業主の場合、
| 対象年 | 負担軽減措置 |
|---|---|
| 2026年分 | 2割特例 |
| 2027年分 | 3割特例 |
| 2028年分 | 3割特例 |
という流れになります。
もちろん、それぞれの特例には適用要件があります。
2027年から「3割特例」が始まる
ここが2026年度税制改正の大きなポイントです。
当初は2割特例が終われば、通常の消費税計算へ移行することが想定されていました。
しかし2026年度税制改正により、個人事業者向けに新しく「3割特例」が設けられました。
3割特例では、一定の要件を満たす場合、
売上にかかる消費税額の30%を納付
する方法を利用できます。
2割特例より負担は増えますが、いきなり通常計算へ完全移行するよりは負担が抑えられます。
3割特例を使えるのは2027年と2028年
3割特例の対象期間は、個人事業者の、
- 2027年分
- 2028年分
の消費税申告です。
つまり、2割特例が終了したあと2年間の経過措置という位置づけです。
ずっと使える制度ではありません。
3割特例は誰でも使えるわけではない
ここはかなり重要です。
3割特例は、単に「個人事業主なら売上消費税の30%を払えばいい」という制度ではありません。
国税庁が示している主な要件には、
- 個人事業者であること
- インボイス発行事業者であること
- 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること
- インボイス登録などによって免税事業者から課税事業者になったこと
などがあります。
もともと売上規模などによって消費税の課税事業者になる人まで、すべて3割特例を使えるわけではありません。
自分が対象になるかどうかは、必ず国税庁の適用要件を確認してください。
法人は3割特例を使えない
今回の3割特例で、特に注意したいのがここです。
3割特例は個人事業者向けです。
法人は対象外です。
2割特例は一定の要件を満たす個人事業者・法人のどちらにも利用できましたが、2027年以降の3割特例は個人事業者に限定されています。
そのため、一人法人や小規模法人の場合、
「2割特例が3割特例に変わるだけ」
と考えていると間違える可能性があります。
法人については、2割特例終了後、原則課税または簡易課税など、自社に適した方法を確認する必要があります。
簡易課税とは?
2割特例や3割特例が使えない場合の選択肢として重要なのが簡易課税制度です。
簡易課税では、実際に支払った消費税を一件ずつ計算する代わりに、業種ごとに決められた「みなし仕入率」を使って消費税を計算します。
国税庁が定めるみなし仕入率は、
| 事業区分 | 主な事業 | みなし仕入率 |
|---|---|---|
| 第1種 | 卸売業 | 90% |
| 第2種 | 小売業など | 80% |
| 第3種 | 製造業・建設業など | 70% |
| 第4種 | その他 | 60% |
| 第5種 | サービス業など | 50% |
| 第6種 | 不動産業 | 40% |
となっています。
例えばWEB制作などのサービス業が第5種に該当する場合、みなし仕入率は50%です。
単純化すると、売上にかかる消費税額の50%を納めるイメージになります。
3割特例と簡易課税、どちらが得?
ここで、
「じゃあ3割特例を使えるなら、そっちの方が得じゃない?」
と思うかもしれません。
多くのサービス業では、単純な税率だけを比較するとそうなる可能性があります。
例えば売上にかかる消費税が100万円だった場合、単純化すると、
- 3割特例:30万円
- 第5種の簡易課税:50万円
となります。
ただし、業種によってみなし仕入率は違います。
卸売業なら90%、小売業なら80%なので、簡易課税の方が有利になるケースもあります。
「3割特例があるから自動的にそれを使えばいい」とは限りません。
業種や仕入れ状況によって有利な計算方法が変わる可能性があります。
もう一つの変更「8割控除→7割控除」とは?
ここからが少しややこしいところです。
インボイス制度には、2割特例とは別に、
免税事業者などインボイスを発行できない事業者から仕入れた側
に対する経過措置があります。
これは、インボイス制度開始直後から仕入税額控除を完全にゼロにすると影響が大きすぎるため設けられたものです。
これまで、2023年10月から2026年9月までは80%を控除できる仕組みになっていました。
昔の記事にある「2026年10月から50%」は変更された
ここは2026年現在、特に注意した方がいいポイントです。
以前の制度では、
- 2023年10月~2026年9月:80%控除
- 2026年10月~2029年9月:50%控除
とされていました。
そのため、今でもWEB上には、
「2026年10月から50%になる」
という記事がたくさん残っています。
しかし2026年度税制改正で、このスケジュールが変更されました。
現在は、
| 期間 | 控除割合 |
|---|---|
| ~2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日~2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日~2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日~2031年9月30日 | 30% |
という段階的な縮小に変更されています。
「2026年10月から80%→50%」という情報は、2026年度税制改正前の情報です。
2割特例と7割控除はまったく別の話
ここがインボイス制度で一番混乱しやすいところかもしれません。
2割特例・3割特例と、8割控除・7割控除は別の制度です。
| 誰のための制度? | |
|---|---|
| 2割特例・3割特例 | インボイス登録で課税事業者になった小規模事業者側 |
| 8割・7割・5割・3割控除 | 免税事業者等から仕入れた課税事業者側 |
数字が似ているので非常に紛らわしいですが、目的が違います。
免税事業者は2026年10月から仕事がなくなる?
以前は、
「2026年10月から仕入税額控除が50%になるので、免税事業者との取引が一気に不利になる」
という話もありました。
しかし今回の改正により、2026年10月からの控除割合は70%となりました。
影響がなくなるわけではありませんが、当初予定されていた50%よりは緩やかな移行になっています。
だからといって、
「インボイス登録していない事業者とは取引しない」
と一律に考える必要があるかどうかは、取引条件や価格、相手の技術力なども含めて判断すべきでしょう。
インボイス登録するかどうかは「税金だけ」で考えない
フリーランスや小規模事業者の場合、インボイス登録をするかどうかを、
「税金が増えるか減るか」
だけで考えがちです。
しかし実際には、
- 取引先が法人中心なのか
- 一般消費者中心なのか
- 売上規模
- 今後の事業規模
- 取引先との関係
- 簡易課税を使えるか
なども考える必要があります。
BtoC中心の仕事ならインボイスの影響が小さいこともあります。
逆に法人相手の仕事が中心なら、取引先側の仕入税額控除も関係してきます。
2026年中に確認しておきたいこと
現在2割特例を使っている人は、2026年のうちに少なくとも次の点を確認しておいた方がいいでしょう。
- 自分は2027年の3割特例の対象になるか
- 個人事業者なのか法人なのか
- 基準期間の課税売上高はいくらか
- 簡易課税を使った場合の税額はいくらになるか
- 一般課税ならどの程度になるか
2027年になってから考えるのではなく、今のうちに概算だけでも比較しておくと資金繰りがしやすくなります。
売上が同じでも手取りは変わる
2割特例から3割特例になるということは、対象者であっても消費税負担は増えます。
例えば売上にかかる消費税額が100万円なら、単純化すると、
- 2割特例:20万円
- 3割特例:30万円
です。
差は10万円。
売上規模が大きくなれば、その差も大きくなります。
売上が前年と同じでも、納税額が増えれば手元に残る金額は減ります。
そのため、フリーランスや個人事業主は価格設定や利益率まで含めて考えておく必要があります。
「売上=自分のお金」と考えない
特に独立したばかりの頃は、銀行口座に入った金額をすべて自分のお金のように感じてしまいがちです。
しかし事業をしている以上、
- 消費税
- 所得税
- 住民税
- 社会保険
- 外注費
- 各種経費
などがあとから出ていきます。
売上が増えたからといって、同じ割合で自由に使えるお金が増えるわけではありません。
税制変更があるときほど、売上ではなく「最終的にいくら残るか」を見ることが重要です。
消費税のために価格を見直すのもおかしくない
税金や仕入価格、ソフトウェア代、サーバー代、人件費など、事業コストは変わります。
それなのに、何年も同じ料金で仕事を続けなければならない理由はありません。
必要な利益を確保できない価格になっているなら、価格を見直すことも事業運営の一部です。
安いことが正義ではありません。
継続して責任を持ってサービスを提供できる価格であることの方が重要だと思います。
まとめ|2026年はインボイス制度の大きな切り替え年
2026年は、インボイス制度にとって一つの節目です。
ポイントを整理すると、
個人事業者の2割特例は2026年分まで利用可能。
2027年・2028年には一定の個人事業者向けに3割特例が新設。
法人は3割特例の対象外。
免税事業者等からの仕入れに対する控除は、2026年10月から80%→70%。
となります。
特に注意したいのは、WEB上に税制改正前の「2026年10月から50%控除」という情報が今も残っていることです。
税金や制度に関する情報は、公開日を確認することが大切です。
そして2割特例を使っている人は、
「まだ2026年だから大丈夫」
ではなく、今のうちに2027年以降の税額を一度計算してみることをおすすめします。
税金は、支払う段階で慌てるのではなく、先に把握して価格や資金繰りへ組み込んでおく。
事業を続けていくうえでは、その方が圧倒的に楽です。
なお、実際の適用可否や税額は事業者ごとの状況によって異なります。この記事は制度の一般的な解説であり、具体的な申告については国税庁・税務署・税理士等へ確認してください。

