企業間取引をしていると、ごく当たり前のように出てくる言葉があります。
「月末締め翌月末払いです」
場合によっては、
「月末締め翌々月末払いです」
ということもあります。
昔から企業間取引では一般的な商習慣なので、特に疑問を持たず受け入れている会社も多いと思います。
でも、私は以前からこの仕組みに少し疑問があります。
商品やサービスを発注して、受注者が約束どおり納品した。
それなら、
「確認できたら、できるだけ早く払えばいいのでは?」
と思うからです。
この記事で言いたいこと
支払いサイトという仕組み自体をすべて否定するつもりはありません。大量の取引を処理する企業などでは、締め日を設ける合理性もあります。
ただし、特に小企業や個人事業主同士の取引まで「月末締め翌月末払い」を当然のルールにする必要があるのか。現在のIT・決済環境を考えると、一度見直してもいい商習慣だと思っています。
- そもそも「支払いサイト」とは?
- なぜ納品した側が30日、60日と待つのか
- 「発注企業の資金繰りのため」という説明には違和感がある
- BtoCなら「60日後に払います」は基本的に通らない
- 「社内承認に時間がかかる」も昔ほど強い理由ではない
- 発注時に承認を済ませておけばいいのでは?
- 「信用取引だから後払い」も少し違う気がする
- 実際、国も支払いサイト短縮の方向へ動いている
- WEB・広告制作でも支払い遅延は実際に問題になっている
- 早く払ってほしければ「2%値引き」にも違和感がある
- 小企業・個人事業主に「締め日」は本当に必要なのか
- 理想は「納品・検収したら数日以内に支払う」
- 振り込みのために銀行へ行く必要はもうない
- 銀行振込だけでなくクレジットカード決済も用意する
- 小規模事業者ならSquareは使いやすい
- カード決済手数料をどう考えるか
- 支払いが早い会社は、それだけで取引先から選ばれる
- 発注者と受注者は上下関係ではない
- まとめ|支払いサイトは「昔からそうだから」で続けなくてもいい
そもそも「支払いサイト」とは?
支払いサイトとは、取引で代金が発生してから、実際に支払いが行われるまでの期間のことです。
たとえば、
- 月末締め翌月末払い
- 20日締め翌月末払い
- 月末締め翌々月末払い
といった条件があります。
たとえば9月10日に納品して、「9月末締め・10月末払い」なら、実際に入金されるのは10月末です。
納品日によっては、代金を受け取るまで50日前後待つことになります。
企業間取引では珍しくありません。
でも、改めて考えると少し不思議な仕組みでもあります。
なぜ納品した側が30日、60日と待つのか
WEB制作を例にしてみます。
制作側は仕事を完成させるまでに、
- 人件費
- 外注費
- 写真撮影費
- 素材費
- サーバー関連費用
- 交通費
などを先に支払っていることがあります。
数か月かけて制作し、ようやく納品。
そこからさらに、
「弊社は翌々月末払いなので、入金は約60日後です」
となる。
つまり、受注側は制作期間中だけでなく、納品後もしばらく資金を立て替えているような状態になります。
そこで私が疑問に思うのが、
なぜ発注者側のキャッシュフローの都合を、納品した側が無利息で負担するのか?
ということです。
「発注企業の資金繰りのため」という説明には違和感がある
支払いサイトが必要な理由として、企業のキャッシュフロー管理が挙げられることがあります。
もちろん会社経営に資金繰りは重要です。
それ自体は理解できます。
ただ、発注する側の立場から考えると、
そもそも支払う資金を確保した上で発注するべきではないのか。
とも思います。
100万円のWEBサイトを発注するなら、100万円を支払う前提で発注する。
設備を買うなら、その代金を用意して買う。
外注を使うなら、その外注費を予算として確保する。
普通に考えれば、それが一番シンプルです。
BtoCなら「60日後に払います」は基本的に通らない
少し乱暴な比較ですが、個人的に分かりやすいと思うのがBtoCとの違いです。
会社の社長でも経理担当者でも、コンビニで商品を買うときにはその場で支払います。
ネットショップで商品を買う場合も、カード決済や銀行振込などで代金を支払います。
レジで、
「弊社は月末締め翌々月末払いなので、60日後に振り込みます」
とは普通言えません。
もちろんBtoBには継続的な信用取引という別の性質があるので、BtoCと完全に同じではありません。
それでも、
必要な商品・サービスを購入し、その対価を支払う
という本質は同じです。
BtoBになった途端、支払いを1か月、2か月後ろへずらすことが当然になるのは、少し不思議ではないでしょうか。
「社内承認に時間がかかる」も昔ほど強い理由ではない
もう一つよくあるのが、
「社内処理があるので支払いまで時間が必要です」
という理由です。
これも以前なら分かります。
紙の請求書が届いて、担当部署から経理へ回し、印鑑を押し、銀行へ行って振込処理をする。
そういう時代なら、一定の締め日を作ってまとめて処理する合理性はあったと思います。
でも現在は、
- 電子請求書
- クラウド会計
- ネット銀行
- インターネットバンキング
- 法人カード
- オンライン決済
があります。
銀行の窓口へ行かなければ振り込みできない時代ではありません。
振込処理だけなら、パソコンやスマートフォンから数分で終わります。
そう考えると、
「経理処理に時間がかかるから翌々月末払い」
というのは、技術的な問題というより、自社の制度や昔からの慣習の問題になってきていると思います。
発注時に承認を済ませておけばいいのでは?
そもそも、私は社内承認の順番にも疑問があります。
理想的には、
- 必要な商品・サービスを検討する
- 見積もりを取る
- 金額を確認する
- 社内承認を取る
- 予算を確保する
- 正式発注する
ではないでしょうか。
この段階で「この会社に100万円支払う」という承認まで取れているはずです。
あとは納品後に、契約どおりの内容か確認する。
問題なければ支払う。
それでいいと思います。
納品後になってから、改めて何週間も社内承認を回す必要があるとすれば、発注時の承認とは何だったのかとも感じます。
「信用取引だから後払い」も少し違う気がする
BtoBの掛け売りについて、
「企業間の信用取引だからできる」
という説明もあります。
確かにその通りです。
継続的に取引する企業同士だから、商品を先に渡して後から代金を回収できます。
ただ私は、信用という言葉を逆から考えます。
納品されたら迅速に支払う会社の方が、取引先からすれば信用できる会社ではないでしょうか。
30日後に確実に払う会社。
60日後に確実に払う会社。
3日後に確実に払う会社。
どの会社と積極的に仕事をしたいかと言われれば、私は3日後に払ってくれる会社です。
「支払いを遅らせること」が信用取引なのではなく、
「約束した金額を確実に支払えること」が信用
なのではないかと思います。
実際、国も支払いサイト短縮の方向へ動いている
これは単なる個人的な感想だけではありません。
2026年1月から施行された中小受託取引適正化法、いわゆる「取適法」では、対象となる取引について、発注側は給付を受領した日から60日以内、かつ、できる限り短い期間で支払期日を設定する必要があります。
また、手形払いは禁止され、一定の電子記録債権やファクタリングなど、受注側が支払期日までに満額を受け取ることが難しい支払方法も規制されています。
さらに2026年9月、公正取引委員会と中小企業庁は、法律の対象外となる取引についても、支払いサイトを60日以内へ短縮し、できる限り現金で支払うことなどを求めています。
つまり制度の流れとしても、「発注側の都合で長期間支払いを待たせる」方向ではなく、支払い条件を適正化・短期化する方向へ進んでいます。
WEB・広告制作でも支払い遅延は実際に問題になっている
DIBLOGの読者に近いところでは、広告制作業界でもこの問題は他人事ではありません。
2026年に公正取引委員会が行った広告業界への調査では、広告制作業者への支払いが成果物の受領から60日を超える可能性がある制度を採用していた事業者に対し、支払制度を見直すよう指導が行われています。
また、請求書の提出が遅れたことを理由に支払いを遅らせていた事例についても、請求書提出の有無にかかわらず、対象取引では受領から60日以内に支払う必要があるとされています。
WEB制作、デザイン、広告、動画制作などは、成果物を納品するまでに人件費や外注費を先行して負担する仕事です。
だからこそ、支払いサイトは小さな制作会社やフリーランスにとってかなり大きな問題です。
早く払ってほしければ「2%値引き」にも違和感がある
企業によっては、早期支払い割引という仕組みがあります。
たとえば、
「通常60日後ですが、30日以内の支払いなら2%値引きしてください」
といったものです。
もちろん双方が納得して利用するのであれば、それ自体を否定するものではありません。
ただ、個人的には少し不思議です。
本来100万円受け取る契約なのに、早く受け取るためには98万円にしなければならない。
すでに制作側は、納品までの人件費や外注費を先に負担しています。
さらに早く回収するためのコストまで受注側が負担する。
結局、
発注側の資金繰りを良くするためのコストを、受注側が負担しているだけではないか。
とも考えられます。
小企業・個人事業主に「締め日」は本当に必要なのか
特に考え直してもいいと思うのが、小規模事業者同士の取引です。
毎月数百件、数千件の請求処理がある大企業なら、締め日を設定して経理処理をまとめる意味はあります。
でも、月に10件、20件程度の取引しかない小さな会社でも、
「うちは20日締め翌月末払いです」
とする必要が本当にあるのでしょうか。
昔から会社というものはそういうものだから。
前の勤務先もそうだったから。
取引先もそうしているから。
そんな理由だけで続いているルールも少なくないと思います。
少なくとも、小企業や個人事業主ならもっとシンプルでもいいはずです。
理想は「納品・検収したら数日以内に支払う」
私が一番シンプルだと思う流れはこれです。
- 見積もりを確認
- 予算を確保
- 社内承認
- 正式発注
- 商品・サービス提供
- 納品
- 検収
- 請求
- 数日以内に支払い
これなら、発注側にも受注側にも非常に分かりやすい。
もちろん案件によっては前金や着手金を設定してもいいでしょう。
金額が大きい案件なら、
- 着手時30%
- 中間時30%
- 納品時40%
のような分割払いも合理的です。
少なくとも、全部完成させて納品してからさらに60日待つよりは、受発注双方にとって健全ではないでしょうか。
振り込みのために銀行へ行く必要はもうない
それでも、
「支払いのたびに銀行へ行くのは大変」
という会社もあるかもしれません。
でも今はネット銀行やインターネットバンキングがあります。
パソコンから振り込みできます。
スマートフォンからでもできます。
振り込みのためだけに、
- 車で銀行へ行く
- 駐車する
- ATMや窓口で待つ
- 会社へ戻る
という時間を使う方が、会社としてはコストではないでしょうか。
仮に30分かかれば、それも立派な人件費です。
「振込手数料を数百円節約するために、数千円分の人件費を使う」
ようなことになっていないかは、一度考えてみてもいいと思います。
銀行振込だけでなくクレジットカード決済も用意する
さらに、小さな会社や個人事業主なら、支払い方法自体を増やしてしまう方法もあります。
その一つがクレジットカード決済です。
たとえば、
- WEB制作費
- デザイン費
- 保守費
- コンサルティング費
- 月額サービス
などをカードで支払えるようにします。
発注者側はその場で支払いを完了できます。
一方、カード会社への実際の支払いは後日です。
つまり、発注側が必要としている「支払い猶予」を、受注者ではなく決済サービス側が担う形にできます。
これはかなり合理的な仕組みだと思います。
小規模事業者ならSquareは使いやすい
クレジットカード決済を導入する方法はいくつかありますが、小規模事業者なら選択肢の一つとしてSquareがあります。
Squareには対面決済だけでなく、「Square 請求書」というオンライン請求書機能があります。
請求書をメールやSMSで送信し、相手は受け取った請求書からクレジットカードや対応するモバイル決済で支払えます。
2026年9月時点では、Square 請求書のフリープランは月額固定費0円で、通常の請求書カード決済手数料は3.25%です。
カード情報を手入力した場合など、一部の決済方法では手数料が異なります。
決済手数料はかかりますが、
- 請求書をオンラインで送れる
- 相手がその場でカード決済できる
- 支払い状況を確認できる
- リマインダーを自動化できる
- 入金処理も自動化できる
というメリットがあります。
またSquare公式では、通常入金の場合、三井住友銀行・みずほ銀行なら翌営業日、その他の金融機関では原則毎週金曜日に自動振込と案内されています。
「請求して、振込を待って、入金確認して、催促して」という作業を減らしたい小規模事業者とは相性がいいと思います。
※Squareの料金・手数料・入金条件は変更される場合があります。導入時は公式サイトで最新情報をご確認ください。
カード決済手数料をどう考えるか
カード決済を導入すると、当然決済手数料がかかります。
「銀行振込なら手数料がほとんどかからないのに、3%前後払うのはもったいない」
と思う人もいるでしょう。
それも理解できます。
だから、すべての取引をカード決済にする必要はありません。
銀行振込も残しておけばいいと思います。
その上で、
- 銀行振込
- クレジットカード
の両方を選べるようにする。
カード払いを希望する取引先だけカードを利用する。
これでも十分です。
重要なのは、
「支払い方法を会社側の都合で一つに固定しない」
ということです。
支払いが早い会社は、それだけで取引先から選ばれる
仕事を発注する会社は、つい、
「仕事を出している側」
という感覚になりがちです。
でも受注者側も取引先を選んでいます。
同じ金額。
同じ仕事内容。
一方は翌々月末払い。
一方は納品後3日で支払い。
どちらの仕事を優先したくなるかは、かなり分かりやすいと思います。
特に腕のいいフリーランスや小規模制作会社ほど、仕事を選べます。
だから、
支払いの速さそのものが企業の信用や採用力ならぬ「外注力」になる
という考え方もあっていいと思います。
発注者と受注者は上下関係ではない
結局、この問題の根底には、
「お金を払う側の方が立場が上」
という昔ながらの感覚もあるのではないでしょうか。
でも本来、企業間取引は対等です。
発注者は、自分たちに必要な技術・商品・サービスを提供してもらう。
受注者は、その対価としてお金を受け取る。
お互いに必要だから取引しています。
だから私は、
「うちは大企業だから60日後」
「取引してあげているから、この条件に合わせて」
という考え方より、
納品してくれた会社へ、できるだけ早く正確に支払う会社
の方が健全だと思っています。
まとめ|支払いサイトは「昔からそうだから」で続けなくてもいい
月末締め翌月末払い。
翌々月末払い。
掛け売り。
企業間取引では昔から普通に行われてきました。
そして、大量の取引をまとめて処理する会社などでは、今でも締め日を設定する合理性があります。
だから支払いサイトそのものを全面否定するつもりはありません。
ただし、すべての会社が同じ仕組みを使う必要もありません。
特に小企業や個人事業主なら、
- 発注前に予算を確保する
- 発注時に社内承認を済ませる
- 納品後すぐ検収する
- 数日以内にネット銀行で振り込む
- カード決済も選べるようにする
くらいシンプルでもいいと思います。
なぜ発注者側の資金繰りや社内都合を、納品した側が30日・60日と無利息で負担するのか。
昔からの商習慣だからと受け入れる前に、一度そこから考えてみてもいいのではないでしょうか。
銀行へ行かなければ支払いができなかった時代とは、もう環境が違います。
支払いまで含めて仕事の進め方です。
早く、簡単に、確実に支払える仕組みを作る。
それは受注者のためだけでなく、発注する会社自身の信用を高めることにもつながると思います。


